- 田内 志文
- 2011-09-05 (月)
- 小説
1、
薄暗い路地の入り口におかれた自動販売機のかげに、一匹の子猫がうずくまっていました。青く澄んだ瞳。短い茶色の毛並み。薄汚れていますが、きれいに洗えばきっととてもかわいらしい子猫にちがいありません。子猫はただじっと、表通りを歩いてゆく人々を見つめていました。寂しげな目で、声ひとつ立てずに。
子猫はこの春に生まれたばかりで、まだお母さんに甘えたくてたまらないほど子供だったのですが、お母さんはもういません。大きな自動車とぶつかり、目をさまさなくなってしまったのです。しばらくの間、子猫はお母さんを起こそうとして、呼びかけたり、前足で踏み踏みしたりしてみたのですが、お母さんが目をさますことはありませんでした。そして、二日目の朝にやってきた、グレーの服を来た町の職員たちに、お母さんはつれていかれてしまったのでした。それっきり、子猫はひとりぼっちになってしまったのです。
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