- 田内 志文
- 2010-07-07 (水)
- 小説
13、
遠くから、幹線道路を走る車のエンジン音や排気音が聞こえてくる。他の教習生たちが乗る車やバイクの音も。ゆっくりと前輪が進み出す。俺は花の咲き乱れる一本橋の上を、涙が流れるに任せながら、ハンドルを小さく振り、進んでゆく。やがて、前輪が静かに橋から降り、続けて後輪が降りた。ゆっくりとバイクを進めながらヒロミツの顔を横目で見ると、ヒロミツは目を丸くして俺を見て「なんだよ」とつぶやいた。
スラロームへとUターンしながらもう一度目をやると、橋に咲き乱れていたあの花はすっかり消え去り、いつもと同じ一本橋が鎮座しているだけだった。スラロームを抜け、波状路を抜け、急制動で停止する。左右の安全確認をして優先道路に合流すると、俺はゆっくりとバイクを路肩に寄せた。エンジンを切り、後方の安全を確かめてから下車し、サイドスタンドを立てる。ヒロミツが歩み寄ってくる。
「なんだよ泣いちゃって。大げさだな」ヒロミツは、俺の採点を書いた紙を見ながら怪訝そうな顔で言った。「一本橋、何とか渡ったな。九秒二。こりゃ減点だな。あとは、全体的にちょっと加速が弱いから、もっとちゃんと加速して。メリハリつけて」
そこに来て、ようやく俺はこれが検定であることをはっきりと思い出してきた。減点。大丈夫だろうか。俺の顔色が変わったのを見て取ったのだろうか。ヒロミツは声を落とすと「まあこんくらいならな」と言ってニヤリと笑い、続けて大声で「じゃあ次、普通二輪ね。三番の人!」
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