- 田内 志文
- 2010-05-24 (月)
- 小説
12、
ある夜、獣は嬉しそうにくるくると宙返りしながらレントンの街へとやってきました。もう、教会よりも先にマヤの待っている窓へと向かいます。ですが、獣がふと不思議そうに首をひねりました。カーテンが閉じているのです。もしかしたら、今夜はたまたま寝ているのかもしれない。暁の獣はすこし残念そうに教会の塔に降り立つと、ヴァイオリンをかなでました。
窓の外から聞こえてくるヴァイオリンの音色を聴いて、マヤはひとつぶ涙を流しました。今日もケモノさんは来てくれたのに、体が動かないのです。悔しくて、悲しくて、たまらない気持ちでしたが、それでもヴァイオリンの音色を聴いていると心強く感じました。
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