Articles - 小説
ラファエロとダイナマイト
- 田内 志文
- 2011-09-05 (月)
- 小説
1、
薄暗い路地の入り口におかれた自動販売機のかげに、一匹の子猫がうずくまっていました。青く澄んだ瞳。短い茶色の毛並み。薄汚れていますが、きれいに洗えばきっととてもかわいらしい子猫にちがいありません。子猫はただじっと、表通りを歩いてゆく人々を見つめていました。寂しげな目で、声ひとつ立てずに。
顔なしエイミーと四枚の窓
- 田内 志文
- 2011-03-01 (火)
- 小説
プリンセス
- 田内 志文
- 2011-02-10 (木)
- 小説
1、
タマラはアフリカのなんとか族の酋長の娘。いつもびっくりするような民族衣装を着て、彫刻の入った木製の杖をつきながら街を歩いてる。見た目年齢だけど、もう五十歳近いはず。もしかしたら超えてるかも。薄く色のついた大きなサングラスをいつもかけてて、唇だけがすごく赤く、歯だけがすごく白い。
つまみ屋五郎兵衛 「好」の巻、その四
- 明川 哲也
- 2010-12-31 (金)
- 小説
坂本さんとマイちゃんが帰った後、案の定、テーブル席で飲んでいた外野陣からぼやきとも非難ともつかぬ声があがった。
「あんなに残していきやがって。何考えてんだか」
「頼まなければいいんだ。食えないなら」
「稼ぎがあるからいいんだよ。俺らとは違うんだ」
「そうか? そういう問題じゃないだろう」
つまみ屋五郎兵衛 「好」の巻、その三
- 明川 哲也
- 2010-09-09 (木)
- 小説
坂本さんに出したイナゴの佃煮を自分でも齧ってみたせいだろうか。あるいはそれを食べていたと日本語の呼び名を口にしたせいだろうか。注文された料理を作りながら、五郎兵衛はまな板の上に、鍋の底に、蛇口からほとばしる水の向こうに跳躍する無数の黒い影を見ていた。
湧くようにそれは現れる。日没とともにそれは降る。
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