Articles - 田内志文

ラファエロとダイナマイト

1、

 薄暗い路地の入り口におかれた自動販売機のかげに、一匹の子猫がうずくまっていました。青く澄んだ瞳。短い茶色の毛並み。薄汚れていますが、きれいに洗えばきっととてもかわいらしい子猫にちがいありません。子猫はただじっと、表通りを歩いてゆく人々を見つめていました。寂しげな目で、声ひとつ立てずに。

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顔なしエイミーと四枚の窓

1、

 醜いエイミーは、
 美しさとは木の葉や草原や、
 猫の親子や、
 満天の星空や、
 よく凪いだ海や、
 さらさらした髪の同級生や、
 そんなものだと思っていました。

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プリンセス

1、

 タマラはアフリカのなんとか族の酋長の娘。いつもびっくりするような民族衣装を着て、彫刻の入った木製の杖をつきながら街を歩いてる。見た目年齢だけど、もう五十歳近いはず。もしかしたら超えてるかも。薄く色のついた大きなサングラスをいつもかけてて、唇だけがすごく赤く、歯だけがすごく白い。

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一本橋ララバイ

1、

 目の前にはまっすぐに伸びてゆく道がある。俺はその手前で止まったまま、じっと手に汗をかいている。心が震える。肩がいかる。分かっている。行かなくちゃいけないのは分かっている。この道を抜けなければ、俺に未来はない。たかだか十秒の道のり。なんてことはない。何回だって俺は通り抜けてきた。また一回、同じことをすればいいだけだ。

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暁の獣と夜明けのヴァイオリン

1、

 ずっとずっと昔、まだ僕が生まれるよりもだいぶ前のこと。一度だけ世界じゅうどこにも朝がこなかった日がありました。そんな馬鹿なと思うでしょうが、これは本当の話。しかもその日は、世界のあちこちの街という街で、それは大きな流れ星が見えた日でもあるのです。これは僕が小さかったころ、まだ元気だったおばあさんから聞いたお話。君が昨日の夜に流れ星を見たと大はしゃぎしてたので、久しぶりに思い出しました。

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